Skin Skincare University

レチノール処方 vs 医療用トレチノイン——濃度と効果の科学

LEVEL 4 美容医療 vs ホームケア
KAIAN R&D Team | |

レチノイドは、エイジングケアにおいて最もエビデンスが豊富な成分群です。しかし、市販の「レチノール」と医療用の「トレチノイン(レチノイン酸)」では、作用メカニズムと効果に大きな差があります。

レチノイド変換経路図レチノールRetinol市販化粧品変換レチナールRetinal中間体変換レチノイン酸Retinoic Acid(活性型)処方トレチノイン直接作用(変換不要)市販レチノール 0.025-0.1%変換効率は個人差が大きい(約5-20%)バクチオール(植物性代替)

レチノイドの変換経路

肌で実際に作用するのはレチノイン酸(トレチノイン)です。市販のレチノールは、皮膚内で「レチノール→レチナール→レチノイン酸」と2段階の酵素変換を経て初めて活性型になります。この変換効率には個人差が大きく、実際に活性型へ変換される割合はごく一部にとどまるとされています。

市販レチノール vs 処方トレチノイン

市販レチノールは一般に0.1〜1%程度の濃度で配合されますが、レチノイン酸への変換を経るため実効濃度はさらに低くなります。一方、処方トレチノインは0.025〜0.1%と低濃度でも変換なしで直接作用するため、効果は格段に強力です。ただし、その分刺激も強く、赤み・皮むけ(レチノイド反応)が高頻度で発生します。

漸増プロトコル

レチノイドの使用は「漸増(ぜんぞう)」が鉄則です。低濃度から始め、肌の耐性を見ながら徐々に濃度・頻度を上げていきます。週2回の夜間使用から開始し、耐性ができたら毎晩へ移行するのが標準的なプロトコルです。

バクチオール——植物性代替の可能性

バクチオールは、レチノイン酸受容体(RAR)そのものには結合しないものの、遺伝子発現の変化がレチノールと類似することが示されている植物由来の成分です。レチノールに近い働き(コラーゲン産生のサポート、キメやハリの印象の変化)が報告されていますが、レチノイド反応(赤み・皮むけ)がほぼ見られないとされています。レチノイドに敏感な肌への代替選択肢として注目されています。

参考文献

本記事の科学的記述が依拠する主な査読論文です。

  1. Dhaliwal S, Rybak I, Ellis SR, Notay M, Trivedi M, Burney W, Vaughn AR, Nguyen M, Reiter P, Bosanac S, Yan H, Foolad N, Sivamani RK. Prospective, randomized, double-blind assessment of topical bakuchiol and retinol for facial photoageing. Br J Dermatol. 2019;180(2):289-296. PubMed
  2. Chaudhuri RK, Bojanowski K. Bakuchiol: a retinol-like functional compound revealed by gene expression profiling and clinically proven to have anti-ageing effects. Int J Cosmet Sci. 2014;36(3):221-230. PubMed
  3. Zasada M, Budzisz E. Retinoids: active molecules influencing skin structure formation in cosmetic and dermatological treatments. Postepy Dermatol Alergol. 2019;36(4):392-397. PubMed
※本記事は化粧品成分に関する参考情報であり、効果を保証するものではありません。数値・試験結果は条件により異なります。医薬品的効能を示すものではありません。
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